あるテーマ、疑問に対して異なる立場の2人が意見を述べるのですが、読んでいるといろいろ考えさせられることも多くて面白いコーナーです。
5月号では「ショーガーデンはやる気を出させるか、やる気をそぐか?」がテーマです。
1月号で紹介したテーマでのお二人が再び登場しています。
イギリスではチェルシーフラワーショーを筆頭に、たくさんのフラワーショーなどでガーデンデザイナーたちがショーガーデンをつくってその出来を競います。日本からも石原和幸さんなどがチェルシーフラワーショーで受賞されています。長崎のハウステンボスでも秋に世界のガーデナーがショーガーデンを出展しています。そのショーガーデンが、はたして一般のガーデナーに果たしてどれだけ役に立つのか、というのが今回のテーマです。
ガーデンデザイナーのジェームズ・アレクサンダーシンクレアさんの意見は・・
「毎年ショーのシーズンになると考えさせるんだ。ショーガーデンは本当のガーデナーとは関係ないんじゃないか、と。サッカーのプレミアリーグの試合とよく似ている気がするんだ。試合をみたからといってサッカーが上手になるとは思えないけど、やる気がでたり、興奮したり、イライラしたりはするね。ショーガーデンも同じようなもので、一流のデザイナーとすばらしい技術をもった工芸家、そして最高の育苗家たちが一丸となってつくりだすものなんだ。
名前も'ショー'がついているように、このガーデンは人に見てもらう、あるいは見せびらかすためのガーデンなんだ。ファッションショーの服のようなもので、一般の人が普通に着るためのものでなく、スタイルや色などその中にあるエッセンスを生かすためのものなんだよ。
ファッションとは違うよ、自分は影響されたりしない、というガーデナーもいるだろうけど、時代とともにガーデニングも変化してきていて、変化を続けるショーガーデンにやはり影響されるんだよね。
ショーガーデンが僕らによいガーデニングとはどうゆうものかを教えるためだけのもののだとしたら、人生はずいぶん退屈なものになるだろうね。そう、勉強することは必要だけど、ショーガーデンのすばらしいデザインや完璧な植栽などのディスプレーは楽しむためにあるんだよ。」
これに対してサセックスの小さな田舎のガーデンをもつガーデンライターのヘレン・イェムさんの意見は・・
「そうね、ジェームズ、見せびらかすための庭だって点は私たちの意見は基本的には一緒だわ。巧みにデザインされて、植物は高度に操作され、見る私たちの注意を引くように飾られて、受賞するのを目的につくられる。私をはじめ他のひとたちも、入場券よりもっと欲しいものがあると思うの。ショーガーデンは実際に園芸のやり方を教えてくれればずっと元がとれるんだけど、教えてくれることは決してないわ。
ショーガーデンにはロープが張られていて、その中にはいってみることはできないので、近くで植物を勉強することはできないのでイライラするの。そして、もっと重要な問題は質問に答えてくれる人が配置されていないってこと。せいぜい使っている植物のリストが配られるだけ。何週間もビニールハウスで促成栽培して花の時期を揃えたり、大量のコンポストに植物を密植して息をのむような色や質感の移ろいを作り出したり、といった高度な技巧が使われているのが私には分かるのよ。でもこの技法というのは、一年を通じて美しくて満ち足りる庭をつくる方法とはまったく違ったものだわ。ふつうのガーデナーの園芸の知識を増やすことにはならないの。
でも、ショーガーデンはいろいろ時代の流行を見せてくれたのは認めるわ。」
私もショーガーデンを見て、現実の自分の庭にいったい何か役立つことがあるだろうか、といつも思っていました。お二人もやっぱりそんなご意見みたいですね・・・